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「なんで謝るの?」
「だって、ほんとに何も覚えてないんだもん。私が逆の立場だったら絶対に辛いと思うから……」
後半から声は少し震えていた。
「いいよ、何も覚えてなくても。僕が全部覚えてるから」
「……」
「そのおかげでいつも新鮮な気持ちでいられるし、悪いことばかりじゃないよ」
「……ありがとう」
彼女は少し無理に笑う。
「最近ね、1つだけ私にもいいことがあるって気づいたの」
「おっ、なに?」
「……同じ人を、何度も好きになれるところ」
パチパチと瞬きを繰り返すことしかできない僕を見て、彼女は冗談っぽく言った。
「いいなー、私も何回も好きになってもらいたい」
僕は会う度どんどん好きになっていく。
恥ずかしさが邪魔をして、そのセリフは言えなかった。
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