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今週もデートの行き先は、京急油壺マリンパーク。
はしゃいでバスに乗る彼女の姿はいつも通り。
イルカのショーや、アシカのお食事タイムを見る姿も同じ。
そして、オオメジロザメの水槽の前に来た。
僕はあえて何も言わず、彼女の方から言葉を発してくれるのを待つ。
彼女はしばらく水槽を眺めた後、口を開いた。
「大きい……なんていうサメだろう?」
「えっ」
「知ってます?」
首を傾げた彼女に、僕は言った。
「オオメジロザメ。本州ではここにしかいないんだ……」
いつもと同じセリフを。
「ここだけ? すごい」
彼女は笑顔で、視線を水槽に戻す。
ガッカリしちゃだめだ。
これが、僕たちの恋なんだから。
今まで何とも思わなかったのに、先週の出来事があったからつい欲が出てしまった。
「どうしたの?」
何も知らない彼女が僕の顔を覗きこむ。
「ううん、なんでもない。凶暴で人も襲うらしいよ」
「えっ……。襲いたくて襲ってるんじゃないかもしれないのに……」
彼女は何も変わらない。
僕が好きな彼女のままだ。
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