怪談語り~夏休み編

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 アパートに帰りついた彼は疲れのあまりそのままベッドへ倒れ込むと眠ってしまいます。目覚めたのは友人からの着信でした。時間はもう夕方。  友人は石をちゃんと戻してきたのか確認したかったようです。 「大丈夫だよ。ちゃんと戻してきたから」 「そっか。それならいいんだけど、さっき言い忘れたことがあって」 「なんだ?」 「その石、元の場所に戻さないとまた戻ってきて君に付きまとうはずだから。でももう戻してきたなら心配ないね」  今さら嘘とは言えずに通話を終了。なんとなく嫌な感じがしてポケットに触れると硬いものがある。あの石は帰ってくるときに捨てたはずだ。いや、絶対に捨ててきた。まさか、まさか。  そっとポケットに手を入れました。手にはびっしょりと汗をかいています。硬いその塊を取り出した瞬間思わず悲鳴をあげながら石を放り投げていたそうです。何しろそれは確かに捨てたはずの石だったのですから。
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