怪談語り~夏休み編

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「だよな。その前の話の方が怖かった気がする」 「僕もです。夢に見そうなくらい怖かったです」  そう言いながら桜士に身体を寄せている。  このあとは少し休憩らしい。  できればこの覚えのない石の話について桜士に相談したかったのだが、徹がずっとくっついていて話せる雰囲気ではない。  けれどひとりで悶々としたまま次の語りを聴くのも気が乗らず、主催者側にいる宮永に相談しようかと、トイレにいくと言って廊下に出た。  ここは多目的ホールで、イベント事にはよく使われているそうだ。  廊下に出るとちょうど宮永を見つけた。でも宮永は誰かと談笑中で近寄りづらい。仕方なく手が空くのを待ちつつ、時間を稼ぐためにトイレに向かった。  トイレはやけに静かだ。入ってくるときひとりとすれ違っただけであとは誰もこない。  鏡の前に立ち、自分のうしろを見る。何もいないのはわかっていても見ずにはいられなかった。
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