怪談語り~夏休み編

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 今、わけのわからないこんな状態に置かれ、内心かなりパニックになっている。こうなったら四の五の言っているどころではない。桜士に今すぐ相談しなくては。  そう決心しためぐりがトイレから出ようとしたとき、外側からドアが開いたことに大袈裟に驚いてしまった。 「わぁっ!」 「うわっ! は、はぁ? ちょっとなんなの、驚かせないでくれます?」  そこにいたのは宮永の弟である徹だった。徹は自分が驚いたことが不満なのか、少しキレ気味に文句を言ってくる。 「ご、ごめん。トイレ?」 「ここってトイレ以外に何かあるんですか? 用を足す以外にないと思いますけど」  愚問だったようだ。  徹は会ったときからめぐりにきつい言い方をする。初めて会ったのにどうしてわかったのかというと、桜士に対する話し方や接し方とはかなりの温度差があるからだ。  けれどそれはめぐりしか気づいていないだろう。めぐりと徹は初対面だからなと桜士も言っていたくらいだし。 「そ、そうだよね」
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