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今徹がここにいるということは桜士はひとりだ。相談するならチャンスは今しかない。
「じゃあおれ先にいくね」
「ちょっと待ってください」
「えっ?」
ドアを完全に閉めた徹が出口を塞ぐように立ちはだかる。怒ったような顔をしていた。
「あなた本当に桜士さんと付き合ってるんですか? 僕が一緒にいても関心がないみたいだし。本当に好きなの?」
めぐりと桜士が付き合っていることを宮永と桃崎は知っている。だから宮永の弟である徹が知っていてもおかしくはない。ただ、めぐりを責めるような言い方に、徹は桜士のことが好きなのかもしれないと直感的に思った。
「好きだよ。だから付き合ってるんだ。悪いんだけど今はそれどころじゃなくて」
そう、今は徹の相手をしているところではない。この不可解な石の話を桜士にしなくてはならないのだ。
「それどころじゃないって……。僕には大事なことなんです! 桜士さんのこと本気じゃないなら別れてくださいよ。僕ももう子どもじゃなくなって桜士さんとやっと釣り合えるようになったんですから」
正直早く退いてほしい。話はそれからいくらでも聞くからとりあえず今は桜士と話したいのだ。
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