処方箋:本編

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四十九日の法要を終えた食事の席で 優子さんは、兄と暮らす予定だった マンションに住み始めたのだと両親に伝えていた 「優子ちゃん こんなことになって本当に申し訳ない」 頭を下げる父に 「お父さん。 頭をあげてください 私が、そうしたいんです 勝手に決めてしまって ごめんなさい」   「優子ちゃん…」 「私は大丈夫ですから お母さんの傍にいてあげて下さい」 「気を遣わせてすまないね… 優子ちゃん、帰りは悠に送らせるから ビール付き合ってくれんかね?」 優しい優子さんは父の勧めるビールを飲み 徐々に顔を赤らめていった 「優子さん、大丈夫?」 「うん」 と言うものの目はトロンとしていて 怪しげだ 彼女の荷物を持ち 「優子さん、帰ろうか?」 「うん」 やっぱり酔ってる 優子さんを助手席に押し込み兄が住むはずだったマンションへと車を走らせる 「優子さん、着いたよ」 「……ぅー。…すぅー」 参ったな 彼女の肩を揺すり 「優子さん!着いたよ」 大きく声をかけると 彼女はニッコリと微笑み 小さな鞄から部屋の鍵を取り出し 俺の目の前でブラブラさせた 「はいどーぞ」 鍵を渡された 「優子さん?」 「603号室だよー」 この人、なんて危険なんだろう 引出物の袋を持ち603号を目指すと 優子さんはフラフラと俺の後ろを付いて来る
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