処方箋:本編

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603 と書かれた扉の前に立つ ここが兄貴が暮らすはずだった部屋 後ろを振り向き遅れて歩いてくる優子さんに声をかける 「優子さん、ちゃんと鍵閉めないとダメだよ」 「うん、閉めるよー」 か、軽い。。。 優子さんの掌に預かった鍵を握らせると 優子さんは、ちゃんと鍵を開け部屋に入った 開けられた扉の中に 引出物を置き 「じゃあ。俺帰るから ちゃんと鍵閉めて…」 「洵…」 彼女は俺を洵と呼び フワリと抱きついた 俺は洵じゃない そう言えなかったのは 彼女の瞼が涙で濡れていたから 酔った彼女は俺を兄貴だと思い込んでいる よほど嬉しいのだろう 優しい微笑みを浮かべ 瞼を涙で濡らしながら 眠りに落ちていった 俺にもたれかかり眠ってしまった彼女を部屋の中に運ぶ 「お邪魔します…」 リビングには二人で選んだであろうソファーが置かれていた 流石に寝室には入れず ソファーに彼女を横たわらせる 「俺は洵じゃないよ… 悠だよ。」 眠る彼女に囁き 濡れた瞼に唇を落とした 玄関の鍵を閉め ガコンッ ポストに鍵を投げ入れた
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