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別れのキスのつもりだった…
なのに俺は、またも彼女を追いかけ
この会社に就職を決めた
この町では名の通った商社
父も母も大層喜んでいた
あの人には、あれ以来会っていない
変わらず優しい微笑みを浮かべているだろうか?
優子さん…
あなたは、一人のまま居てくれてるだろうか?
俺の人生は優子さんで形成されているといっても過言ではないだろう
高校、大学、就職
ある意味、俺の指標だ
この大きな組織の中で彼女に巡り会えるかは定かではないが…
研修を終え配属された管理部で
俺は優子さんを見つけた
「舘ぃ~!
ちょっと、こっちこい」
正確には舘さんと呼ばれた人の隣に
彼女がいたんだ
栗色のウェーブがかった柔らかそうな髪を一つに束ね
舘と呼ばれる人や、周りの社員と談笑している
あれは間違いなく優子さんだ
彼女を見間違えたりしない
「はぁーい!
お待たせしましたぁ
岩下君の教育係になる予定の舘でーす」
舘さんは底抜けに明るい女性らしい
「岩下悠です。よろしくお願いします」
「いゃ~ん!岩下君イケメン!!」
「舘。
先輩らしく落ち着け…」
「はぃ。」
部長に軽く指摘され
舘さんはシュンとしてしまった
が、次の瞬間
舘さんはニッと笑い
白い歯を見せ大きく笑った
舘さんは黒髪のショートボブがよく似合う活発そうな人だった
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