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タクシーのシートにもたれ掛かり
半分意識のない優子さんに
「優子さん…家はどの辺り?」
優子さんは眠そうな目を擦りながら
俺の顔をじぃーっと見た
ふふふふ
急に笑い出したかと思ったら
「洵と同じ家ぃ~」
微かに触れていた腕を引っ張り
おれの腕に頬を擦り寄せた
『洵』
兄貴はまだ彼女の中で生きてるんだ
まさか…
まだあのマンションに一人で住んでるのか?
「運転手さーん
見晴台のマンションまで行ってくらさーい」
見晴台か…
運転手さんは少し困った顔をし
「見晴台はマンションばっかりだよ?」
お前分かるのか?と心配そうにミラー越しで俺をみる
「丘の入り口のコンビニを左折した辺りで停めてもらえますか?」
「洵~」
「洵~」
見覚えのあるマンションの下
タクシーを降りると
優子さんは俺を洵だと思い込み
腕を引く
強く拒むことも出来たはずなのに…
俺は、あの日と同じドアの前に立っていた
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