処方箋:本編2

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「俺の気持ちは変わってないから… 時間が絶っても、肩書きがついても 俺の気持ちは、あの時と同じだから」 「……」 優子さんは少し俯き 言葉を飲み込んだ 「もう忘れてた?」 彼女の顔を伺うと 小さく首を振り 泣きそうな顔で微笑んだ 「…なら、いいんだ。」 ぎこちない空気が二人を包んだ でも、一緒に居られる 俺は それだけで満足だ 彼女の歩調に合わせゆっくり歩く いくつかの土産を買い二人でバスに戻る頃にはちょうど集合時間になっていた 「安田、俺前座るわ」 そういい残しバスのエンジンがかかるのと同時に彼女の横の補助席を倒した 「やっぱり優子さんの隣が落ち着くよ。」 補助席に腰を沈めシートベルトをしていると 「もぉ。からかわないで」 優子さんがクスクスと笑う ずっとこの笑顔が見ていたい 俺は、一生この人に捕らわれたままでいい 「優子さん、この後どうするの?」 「…」 「俺…もう、はぐらかされないよ」 「悠くん。」 『悠くん』 なんて懐かしい響きだろう 「そう呼んでくれるの、久し振りだね」 「ごめんね。」 彼女は申しわけなさそうに目を伏せる そんな顔が見たいんじゃない 「謝らないでくれ…」 膝の上に置かれた白い手を上から 力強く握り 彼女を見つめた
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