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終宴
「ねえ! このデジカメ可愛くない? 結婚式用に買っちゃおうかな」
そう言って、ネットオークションを見ていた菜々子が伸晃に振り返った。
パソコン画面にはいかにも菜々子が好きそうな、メタルピンクのデジカメが映し出されている。
しかし伸晃は菜々子に同意するのを躊躇ってしまった。なぜならそのデジカメは、前の彼女の美紗子が持っていた物と同じだったからだ。
一年間付き合った菜々子と、再来週に式を挙げる。
前の彼女の美紗子とは、三年付き合っていた。
美紗子との結婚を意識した時もあったが、菜々子と出会って一目で恋に落ちて告白してすぐに付き合いを始めた。
美紗子にはなかなか別れを告げられず、一年程同時進行で2人と付き合っていたがついこの間別れることが出来た。
その時も普通のデートだと思い込んでいた美紗子はショックが大きかったのか、海で別れてから連絡はない。
「自分の結婚式で、写真なんてとれないよ。デジカメなら、俺のがあるからそれを使えばいい」
「伸くんのお姉さんに預けて撮ってもらうから大丈夫! 決めた! 私、これ落札しちゃおっ」
伸晃の複雑な気持ちを知らない菜々子は嬉しそうにキーボードを叩いた。
ピンクのデジカメは、数日後に菜々子の手元に届き、菜々子は伸晃に嬉しそうにデジカメを見せた。
「ほらっ、やっぱり可愛いでしょ!?」
やはりそのデジカメは、美紗子の持っていた物と同じ機種だった。伸晃は内心苦笑いで、嬉しそうにデジカメの説明書を読む菜々子を見たのだった。
そして、結婚式当日。
菜々子は伸晃の姉にデジカメを渡していた。
伸晃の姉は可愛い義妹の頼みを快く承諾し、教会のバージンロードを歩く所から、誓いのキス、そしてその後の披露宴の最後の退場までたくさんの写真を撮り続けた。
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