1人が本棚に入れています
本棚に追加
仕方なく会社まで歩いて行って、急な用事で休む事を伝えた。
とある会社の事務職をしている私。受付担当の女の子が「わかりました」と頷き「急な用事なら電話でも良かったのに」と気を遣ってくれた。
もちろん私だってそうしたかった。でもケータイがない。道の途中に公衆電話があったけど、使えなかった。
小銭はあったけど、使い方は知ってるけど、会社の電話番号がわからない。
これじゃあ、電話はかけられない。
受付の女の子には「たまたま近くまで来たからよ」と言ったが、かなり苦しい言い訳だろう。
でもそんな事をいつまでも悩んでいられない。ケータイを探さなくちゃ。
来た道を戻りながら、視線は足元を舐め回す。
そんなたいしたものではないけど、ケータイは個人情報の塊だ。もし本当に落としたんだとして、誰かが拾ったとしたら?
たまたま拾った人が、善人で警察にでも届けてくれたならいいけど、悪い人だったら?
住所も名前も知り合いの連絡先も、写真もブックマークも、すべて見られたら?
……悪用されたら?
「そんな、まさかまさか……考えすぎ……」
身震いを押さえつつ、悪い考えを必死で否定した。
最初のコメントを投稿しよう!