これだけは、なくしちゃいけない。

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またもや道端に立ち尽くす事になった私の元へ、おばちゃんが駆け寄って来てくれた。 「あぁいた。ミサキちゃん、さっきはごめんね。用があるならと思って追いかけて来ちゃったわ」 はぁはぁと肩で息をするおばちゃんの姿、恥ずかしさで逃げ出した私を心配して追いかけて来てくれたおばちゃんの優しさが、胸に染みて、涙がこぼれた。 「あらあら、ミサキちゃん。どうしたの……」 泥だらけの軍手を片方はずし、そっと背中を撫でてくれるおばちゃんの手が暖かかった。 ……あれ? 私、確かさっき会社に行ったんだよね? 不意に気付いた事実。 「ミサキちゃん……今日、お仕事は?」 おばちゃんにそう言われて自分の姿を見ると、仕事用のスーツじゃなく、パジャマを着ている事に気付いた。 「……うそ、私この格好で歩いてたの?」 恥ずかしさに恥の上塗りだ。塗りたくりだ。厚塗りだ! 人通りが少ない朝の時間帯といっても、ひとっこひとりいない訳じゃない。それよりも、会社の受付で女の子と話をしたじゃないか。 とにかくお家へいらっしゃいと促してくれたおばちゃんの顔も、見れない。
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