【HARUHI SIDE 真実】

7/11
前へ
/245ページ
次へ
ーーー沙紀さん、ここにいたの? やっとの事で言った。 上手く笑えているだろうか。 頭の中はそればかり考えていた。 さっきの話の中で沙紀さんは確かに俺を選んでくれた。 藤枝さんよりもこの俺を。 なのにーーー 気持ちは不安なままだ。 もしかしたら藤枝さんに断る為にただ、俺を理由にしただけかもしれない。 もしかしたら、後でやっぱり気が変わって藤枝さんの元へ行くかもしれない。 人が聞くと呆れてしまうくらい、バカバカしい事ばかりが俺の頭の中にあった。 だけど、沙紀さんが俺にくれた言葉はーーーー どれも違っていた。 言葉ではなく俺の唇に沙紀さんのそれを重ねた。 一瞬、時が止まった気がした。 いや、止まってしまえば良いのにとさえ思った。 ずっとこのままがいいと願った。 照れて逃げようとする沙紀さんを引き寄せ、自分の膝の上に座らせる。 温泉に入ったんだろう。 沙紀さんの首元から微かに石鹸の良い匂いがした。 俺は抑えられない気持ちをそのまま唇に乗せて伝えた。 沙紀さんの口から甘い溜息が漏れる。 俺はすかさず、ほのかに石鹸の香りがする首筋に唇を這わせ、どうかこの人が俺だけのものになりますようにと赤い印を付けた。 結局、調子に乗るなといつものように叱られたけど、俺は嬉しくて仕方なかった。 沙紀さんとの距離が漸く縮まったかなと そう思えたのに………
/245ページ

最初のコメントを投稿しよう!

991人が本棚に入れています
本棚に追加