991人が本棚に入れています
本棚に追加
おじさんの指定した場所はこれまでの安い居酒屋とは違って高級なBARだった事に少し驚いた。
中に入るといつもの様に穏やかな笑顔で俺に手を振ってくれる。
おじさんが座るカウンター席の隣に俺も座ると
「好きなものをお飲みなさい。今日はワシが奢るから。」
とおじさんが言った。
「おじさん、どうしたの?羽振りイイねぇ。競馬でも当たった?」
俺がそう言うと
「ハッハッハッ…残念ながら競馬は相変わらず当たらんな。実は今日、呼び立てたのは君に話さねばならない事があるんだ。」
「話?」
「ああ……本当の話、だ。」
「なんだよ、勿体ぶって。」
「いや、すまない。実はワシはーーー」
マジか。
冴えない掃除のおじさんが………
うちの会社の会長って?
俺、ヤバイんじゃないのか?
急激に血の気が引いていく気がした。
おじさんが何か話してるのは分かるけど、全く内容が頭に入って来ない。
俺、実名こそは出さなかったものの、結構、際どいことこの人に話してる。
参ったな。
「あの、すいませんでした。謝って済む話じゃ無いのは分かってます。でも今日は失礼させてください。」
俺は逃げるようにその場を離れた。
最初のコメントを投稿しよう!