【HARUHI SIDE 迷いと決断】

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*** 父親の秘書を長年務めている岩崎さんから連絡があったのは沙紀さんと再会してから数日後だった。 近々予定されている吸収合併の話し合いの席に俺も同席するようにと父親からの伝言だった。 俺を切り札にでもするつもりか? ふざけんなってもちろん断ったけど、意外にもそれは相手先からの要望だと言った。 恐らく俺の立場を知っている会長が言ったんだと思う。 仕方なく分かったとだけ言って電話を切ろうとしたら ーーーここの所、社長が少し元気がありません。 岩崎さんが言った。 知ったこっちゃねぇよって言いたかったけど、もしかして俺が沙紀さんの事を話したのが影響してる? あの日、父親は好きにすればいいと吐き捨てるように言った。 お前も母親の様にどこでも行けば良いと言った。 まさかーーー 俺が父親に歯向かったのがショックだったとか? いや、血も通わないような冷酷人間がそれ如きでどうこうなる訳がない。 父親の元気が無かろうが知ったこっちゃねえし。 もう電話切るよって岩崎さんに言いかけたら ーーー社長の書斎にある本棚の隅に一度見て頂きたい物があります。今夜、社長がご自宅に戻られるのは深夜になりますので宜しければ是非。 岩崎さんはそれだけ伝えると通話を終了させた。 見せたい物だって? そんなもの……… 俺は心の中でガキの頃から世話になっている岩崎さんを立てて仕方なく行くんだと言い聞かせながら実家へと向かった。
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