確定彼氏

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「今回の話は無かったことにした。」 「えっ?」 「先程、会長に直にお会いしてその旨を伝えてきた。」 「そうだったんですか……。」 「正直、今も強引な手を使ってでもこの会社は手に入れたい。それくらいの価値がある。しかしながら、色々と私も思うところあって今回は見送った。」 もしかして……おじいちゃんから聞いた話で考えが変わったのかな? やっぱりおじいちゃんが言った通り、どんなに冷酷な人間でも必ず熱い血が通っているんだって。 「君という人がどういう人間なのか知りたかったので会長にお願いして呼んで貰ったんだ。仕事中に時間を取って申し訳ない。話は終わりだ。戻ってくれて構わない。」 言いたいことだけ言うと立ち上がって部屋から出て行こうとした。 「あのっ。」 「なんだ?」 ドアノブに手を掛けたまま振り返る。 うっ、やはりこの威圧感く、苦しい。 だけどここで怯むわけにはいかない。 「私、諦めませんから。陽日の事、絶対にあきらめませんから。」 自分でも凄いこと言ってるよと思う。 だけど、ちゃんと伝えなきゃ。 陽日とまた一緒に過ごせるよう、その思いを伝えなきゃ。 「息子も全く同じ事を言っていた。聞いて呆れる。」 ーーーまぁ、好きにするといい それだけ言うと部屋から出ていった。 一瞬だけ、ほんの一瞬だけど陽日のお父さんが笑った気がした。 「はい、ありがとうございますっ。」 閉まったドアに向けて叫んだ。
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