3年生

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ゴールデンウィーク明けに、 3年になって初めての進路相談があった。 今の段階は本人の希望確認程度のものに過ぎなかった。 出席番号順に呼ばれる。 秋山弓弦が呼ばれた。 ユヅルは相談室のドアをノックして入る。 机が2つ向かい合って置かれ、 1つに担任が座っている。 その前にユヅルも座った。 担任はもう決めているのか?希望はって聞いた。 オレは、 「教育学部を受験しようと思っています 高校の数学教員免許を取得したいんですが…」 と答えた。 『…ほー、そうか。決めている大学があるなら早めに書類を出すように』 そう言われ席を立った。 担任が居ない賑やかな教室に戻ると、 タカがどうだった?と聞いた。 「…ほんと簡単な確認だけだったな」 ってオレは答えた。 しばらくして 黒沢雅美が呼ばれた。 ユヅルの時と同じ事を担任は聞いた。 ……希望は? 決めている事は? 『…まだ決めていません。 でも、決めた時の為に準備はちゃんとしておきたいと思います』 担任はそうだな。出来れば夏休み前には決めておいた方がいいなって言った。 はい。と返事をして教室に戻る。 タカはたいぶ前から農学部と決めていて微生物の研究をしたいらしく最終的には研究室に残りたいらしい。 オレの解らない世界だが、 しっかりと先を考えているようで関心する。 進路相談が始まると、 少し将来が見えて来る気がした。 ユヅルは教台に立ち生徒たちに教える姿。 タカは白衣を羽織り顕微鏡を覗く姿。   オレは…どうなっているんだろうか? どんな姿で何をしているんだろうか? 自分の将来だけが、まだ見えていない。
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