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文也side
婚姻届を出しに行く前日、イツキさんから話があると言われた。
「結婚するなら文也くんに話しておかないといけない事があるの…」
「何?」
言いずらそうにイツキさんは俺に向き合った。
「戸籍を見たら解る事だから話しておかないといけないと思って」
「どういう事?」
「私ね、離婚歴があるの」
「そりゃ、あるよね?親御さんに挨拶に行った時に親御さんと名字が違ってたから気になって親御さんに聞いたから知ってるよ?」
「それだけじゃないの。派遣で新潟に行った時に結婚したから戸籍からは抹消されてるけど…高校を卒業してから同級生だった人とも結婚してたの。だから私ねバツ2なの」
地方で結婚すると北海道で結婚していたという事実は抹消されるんだと新潟で入籍した時に戸籍を見て知ったらしい。
「どっちの離婚も、なんで離婚したのか聞いても良い?」
「どっちも相手が浮気してたの。最初の旦那は結婚して4年目に浮気相手に子供がデキて離婚。次の旦那は結婚して札幌戻ってきてからずっと浮気してて浮気が私にバレて失踪。記入済みの離婚届が送られてくるまで離婚するまで2年間かかった」
「何それ、どっちの離婚も相手の男が悪いだけでイツキさん、悪くないじゃん?」
「私も男に見る目が無かったから…文也くんと結婚すると3回目の結婚になる」
「今どき、離婚歴のある人なんてざらだよ。俺はイツキさんと結婚しても元旦那達みたいにはならないよ?もしかして俺との結婚に不安になった?」
「不安にはなってないけど…文也くん初婚でしょ?こんないくつもバツある私なんかと結婚しても良いのかなって思って…」
俺はイツキさんの親御さんが言いにくそうに離婚の話をしていた理由がやっと解った。
二度の離婚歴で傷付いたイツキさんは結婚を素直に喜べなかったのか。
しかも結婚相手の裏切り。
傷口は相当酷いのかもしれない。
こりゃ一筋縄じゃいかないかもな。
「イツキさんは芹沢になるの嫌なの?前の旦那の姓を名乗ってるってことは名字が変わりたくないってこと?」
「名字が変わりたくないんじゃなくて、手続きの都合で変われなかっただけだからこだわってる訳じゃない」
「それなら問題ないでしょ?明日、婚姻届出すよ」
半ば強引だけど俺は話を進めた。
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