10人が本棚に入れています
本棚に追加
「イツキさん、おかえりなさい」
繋いだ手を引いてマンションに入っていった。
オートロックを解除してエレベーターに乗って部屋のドアを開けた。
「西川さん、結婚したって言っても信じてくれなくて…」
「あの人、イツキさんを抱きしめたよね?」
「好きだったって言われた。事務所の社員さんなんだけど、そんな事言われると思ってなかった」
部屋に入ってリビングでイツキさんを抱きしめた。
「やっぱ、俺がイツキさん、迎えに行けば良かった」
「送別会行く前から西川さんが送ってくれるっていうから、あんなことになるなら文也くんに迎えに来てもらえば良かったかも」
イツキさんの服から西川さんって人の香水の香りがした。
ムカついた俺はイツキさんの服に手をかけた。
「え、ちょ、文也くん?」
「服からさっきの男の匂いがする」
「私、シャワー浴びて着替えてくるよ」
「上着、クリーニング出して。俺、その匂いする度に思い出すの嫌だから」
俺はイツキさんから離れてソファーに座って、さっきコンビニで買ってきたタバコを開けて一本取り出して火を着けた。
「うん、解った」
イツキさんは自分の部屋に入っていった。
イツキさんはシャワーを浴びて部屋着に着替えてリビングに戻ってきた。
俺はテーブルに出しっぱなしにしていたミネラルウォーターを開けて一口飲んだ。
イツキさんのスマホからラインのメッセージがきたことを知らせる音が聞こえた。
イツキさんはスマホをタップしてメッセージを開いたまま固まっていた。
「どうしたのイツキさん?」
「西川さんからのメッセージなんだけど…」
イツキさんはスマホを俺に見せてきた。
『イツキちゃん、君にはあんな旦那は相応しくない』
はっ?俺の事かよ?
続けてメッセージが入った。
『君には僕の方が良いと思うんだ』
きしょっ!
「イツキさんはコイツには返信しないで、既読スルーして、関わりたくないならブロックかけなよ?」
イツキさんにスマホを返した。
「ブロックかける。なんか西川さん怖い」
「車で送ってきたからマンション知られてるから、これから外出する時は気を付けて。なるべく俺がイツキさんと行動するから」
「解った、そうするね」
最初のコメントを投稿しよう!