10人が本棚に入れています
本棚に追加
書類が揃い、入院準備も終わった、入院前の水曜日、薬が足りなくなるからと俺とイツキさんは徒歩で通える距離にあるイツキさんの通う精神科へ通院した。
担当ドクターに入院の話をして薬を処方してもらって二人で手を繋いで歩いて帰ってきたら、マンション前に見覚えのある車が停まっていた。
「西川さん?」
「俺、話してこようか?」
「良いよ、関わらない方が良い」
「こういうやり方されてムカつくじゃん。イツキさんは部屋に戻ってて良いから」
俺はイツキさんの手を離して車道に停まる車に向かい、運転席側のドアをノックした。
運転席側の窓が開いて西川という男が鋭い目付きで俺を睨み付けてきた。
「こういうの迷惑なんですよ、辞めてもらえませんか?」
「イツキちゃんに君は相応しくない」
「あんたさ、こういうの何て言うか知ってる?ストーカーって言うの。解る?帰らないなら警察呼びますよ?」
「僕は君をイツキちゃんの旦那だなんて認めない。今日のところは帰るよ」
「ちょっと、待てよ。あんたに認めてもらわなくても俺とイツキさんは夫婦なんだ。イツキさんに付きまとうのは辞めてくれ!」
「春樹くんと別れさせて奪った挙げ句、結婚とは良いご身分だな」
「何で、あんたから元カレの話が出るんだよ?」
「春樹くんとはイツキちゃんと春樹くんが付き合う前からの取引先でね。君が二人を別れさせた事には感謝してるが、君らの結婚は計算外だったよ」
「なっ、どういう意味だよ」
「まぁ、いずれ解るだろうさ?」
スッと窓が閉まって車が走り出した。
俺はエントランスで待っていたイツキさんと部屋に戻ってイツキさんに聞いた。
「西川って人から元カレの話されたよ」
「春樹とは派遣先の会社の取引先だから。確か西川さんが担当だったから春樹と私が付き合ってたのは知ってても可笑しくないけど…」
「俺達の結婚を良く思ってないみたいだったよ。意味わかんねぇけど、いずれ解るだろ?って言ってた」
「やだ、何で西川さんが?」
「俺にもさっぱりわかんねぇ。とにかく、あの人には気を付けて。何かアクション起こさないとは限らないから」
「解った。気を付ける」
俺は今まで以上に西川という男の存在を気にするようになった。
最初のコメントを投稿しよう!