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俺は午前は歯科での治療、午後は市内の幼稚園の歯科検診に来ていた。
「はい、大きくお口開けて。虫歯予防のお薬塗るからねぇ」
俺は添島先生が診察した園児の一人一人に使い捨ての歯ブラシで虫歯予防のフッ素をひたすら塗っていた。
最後の園児にフッ素のクリームが塗り終わった頃には午後3時を回っていた。
園児達はこのまま幼稚園バスに乗って帰るようで、俺と一緒に歯科検診に来ていた添島先生と二人で幼稚園が用意した普段は体育館である簡易の診察室で園児達のカルテをまとめていた。
「添島先生。虫歯の治療が必要な園児のカルテまとまりました」
「こっちも、もう終わるよ。芹沢先生は仕事が早いね」
「じゃ、俺、車に器材積んじゃいますね」
俺は検診に使った簡易ライトや器具の入った鞄を俺の車の後部座席に積んでいた。
「先生、お疲れ様でした。今、お茶が入ったので応接室で一息ついてください」
幼稚園の先生と見られる若い保育士が俺に声をかけてきた。
「お気遣いすみません。今行きます」
「芹沢先生でしたよね?」
「はい、何か?」
「先生って去年は指輪してませんでしたよね?最近結婚なさったんですか?」
俺の左手の薬指のイツキさんとお揃いのマリッジリングの指輪を見て聞いてきた。
「はい。つい最近入籍したんですよ」
「そうだったんですか。そういえば、フットサルまだ続けてるんですか?」
「ええ、忙しくて俺はあまり行けてませんけどね(笑)」
「私もフットサルに興味あって…良かったらチームの見学させてもらえませんか?」
「良いですよ。リーダに声掛けとくので来てみて下さい」
俺は幼稚園の保育士とラインのIDを交換した。
俺はこの保育士と簡単にライン交換した事を非常識だったと後々、後悔する事になるとは夢にも思ってなかった。
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