10(承前)

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 再びカケルの狙撃銃が火を噴いた。120メートル先で、窪地に伏せた敵兵がびくりと身体(からだ)を震わせる。遅れて悲鳴が届いた。ミチルが叫んだ。 「着弾確認、狙撃兵一名沈黙」  塹壕(ざんごう)の底に転がったままのクニが叫んだ。 「カケルちゃんはすごいな。4人連続で命中かよ。そんなに狙撃の成績よかったんだ」  カケルは銃床を肩に当てたまま首をひねった。 「成績は悪くなかったですけど、今日は出来過ぎです。こんなに当たるなんで気もち悪いくらい」  盛んに敵も狙撃や援護射撃をおこなっているが、その割には死亡はクニ1名と負傷がミチル1名だった。確かに4連続の狙撃成功は気になる。タツオは双眼鏡で敵の状況を観察しているジャクヤにいった。 「天童の力が働いているのか?」
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