10(承前)

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 タツオは一瞬考えた。死亡確認のされた兵でも、以前防御用の盾(たて)として使用された例もある。あのときはペナルティはなかった。 「だいじょうぶだと思う」 「なら、おれを立ててくれ。塹壕の壁にもたれかけてくれれば、潜望鏡代わりに戦況を報告できる。一度撃たれて死んでるから、二度死ぬことはできないもんな」  タツオはジャクヤと顔を見あわせた。 「悪くないアイディアや」 「いいだろう。テル手伝ってくれ」  タツオはテルと力をあわせて、クニの上半身が塹壕から突き出るように、硬直した深紅の戦闘服を起こした。もち場に戻るとクニが叫んだ。 「おー、すごい眺めだ。くるぞ、敵の第3波、4分隊24名が突撃を開始した」  ソウヤが腹に響く低い声で叫ぶ。 「80式射撃開始」  自動小銃とは比較にならない軽機関銃の発射音が3点バーストで連続した。第3波の先陣を切っていた数名が倒れると同時に、クニが叫んだ。 「決めにかかってきたぞ、第4陣くる。同じく4分隊」
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