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タツオは一瞬考えた。死亡確認のされた兵でも、以前防御用の盾(たて)として使用された例もある。あのときはペナルティはなかった。
「だいじょうぶだと思う」
「なら、おれを立ててくれ。塹壕の壁にもたれかけてくれれば、潜望鏡代わりに戦況を報告できる。一度撃たれて死んでるから、二度死ぬことはできないもんな」
タツオはジャクヤと顔を見あわせた。
「悪くないアイディアや」
「いいだろう。テル手伝ってくれ」
タツオはテルと力をあわせて、クニの上半身が塹壕から突き出るように、硬直した深紅の戦闘服を起こした。もち場に戻るとクニが叫んだ。
「おー、すごい眺めだ。くるぞ、敵の第3波、4分隊24名が突撃を開始した」
ソウヤが腹に響く低い声で叫ぶ。
「80式射撃開始」
自動小銃とは比較にならない軽機関銃の発射音が3点バーストで連続した。第3波の先陣を切っていた数名が倒れると同時に、クニが叫んだ。
「決めにかかってきたぞ、第4陣くる。同じく4分隊」
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