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敵も精強で知られる日乃元の進駐軍だった。ソウヤの被弾でできた80式の沈黙によって生まれたわずかな隙(すき)を見逃さなかった。生き残った敵の副官が叫んだ。
「総員突撃。敵陣地を落とせ!」
クニがやけになってつぶやく。
「うわっ、地面が動きだしたみたいだ。もうここにくるぞ」
弱レーザーの流れ弾が当たったようだ。案山子(かかし)のように塹壕から立ちあがったクニがまた絶叫した。テルが新しい弾倉を装着し掃射を再開した。塹壕に飛びこんでくる敵の先頭集団が叫び声とともに倒れていく。だが、数的な優位に変わりはなかった。
狭い塹壕のなかに最初の敵兵が飛びこむと、転がりながら自動小銃を乱射した。ひと掃射で萬(よろず)家の双子の姉妹、ミチルとカケルが悲鳴をあげて全身を硬直させた。塹壕の壁に折り重なるように倒れていく。
タツオは自動小銃を向けた。自分よりも6~7歳年上の上等兵だった。目があうと敵も自分と同じようにこの状況に驚いているのがわかった。ほんの瞬(まばた)きをするほどの差で、タツオの銃口が先に敵兵を見つけた。最初に塹壕に飛びこんできた殊勲の兵に引き金をひいた。
相手の表情がわかる距離で敵を撃つというこんな感じなのか。タツオがそう考えたとき、転げ落ちるように3人の敵が雪崩(なだ)れこんできた。
テルが拳銃でひとりを倒したが、自動小銃の3点バーストを3度受け沈黙した。
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