10(承前)

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 タツオは訓練場に目をやった。確かに銃撃を受けた兵士はみな気を失っているようだ。撃たれたあとで、クニのように意識がはっきりとしている兵士はいなかった。ジャクヤが叫んだ。 「ちょっと待ってくれ。そんな話きいとらへん」 「今、話した。安心して死ね!」  少佐の拳銃から放たれた弱レーザーがジャクヤの胸に命中した。ジャクヤの悲鳴が聞こえる。  魔眼の少年は全身を深紅に染めて倒れた。残るはタツオひとりだった。少佐がいった。 「おい、こいつを撃ちたいやつはいるか。軍規違反の逆賊・逆島の次男だ」  3人の兵士が銃口をあげた。目に憎しみの光や揺れている。いったい自分がなにをしたというのか。進駐軍と「須佐乃男」計画の無謀さと無慈悲さに全身が震えるような怒りを覚える。 「忘れるな。この戦争に勝つのは特殊兵器なんかではなく、進駐軍兵士の力だ。撃て!」  3つの銃口から放たれた弱レーザーがタツオの胸に集中した。タツオは全身に流れる電撃に絶叫し、意識を失った。
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