春色コッカテイル

78/78
161人が本棚に入れています
本棚に追加
/78ページ
「でも、春樹の助けになれるなら、ボクはきっと幸せだと思うんだ」  にっこりと、僕が心ごと吸いこまれてしまいそうな笑顔で微笑む。  僕は頭上にあるシーナの頭に手をのばし、くしゃくしゃなでた。 「ほんとだ……。ほんとにシーナだ。もう一度会えたんだ」  実感が追いついてくると、おもわずぽろりと、一粒、涙が頬に落ちた。 「人間の世界は恐くなんかないよ。僕は、やっとそう思えたんだ。全部シーナのおかげだよ」  泣かないように頑張って頬をひきあげ微笑むと、シーナはそっと幹の裏に僕をひっぱった。  ちゅ、と額にやさしい感触。再会のキスだ。  僕は目を閉じたまま、やわらかな感触とシーナの懐かしい匂いを堪能した。  そして心の中で宣言する。あの春の日の、夢のような奇跡を思い出しながら。  大丈夫。僕は自分らしく生きることを、もうあきらめたりしないよ。絶望したりしないよ。あの時、君が来てくれたから――――。 了
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!