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「誰かっ! ロープを投げてくれっ! 浮輪でもいい!」
俺の声にいち早く反応した誰かが、クーラーボックスに縄をつけて投げ入れてくれた。
クーラーボックスの取っ手を持つ。
縄を引っ張ってくれる数人の男性。
皆のお陰で、救急隊員が到着する前に彼女を岸へと引き上げることに成功したが、真っ青な顔をしたまま、ピクリとも動かない彼女に人工呼吸を施す。
心臓マッサージをしている間、月明かりに照らされた女性の姿を観察する。
全身が濡れ、服がピッタリと体にひっつき、豊満なバストと括れたウエストを強調している。
体力を全て消耗したような脱力感を露わにし、無防備な姿を晒している。
未知の世界を今もなお彷徨っているように、白目を剥いたまま半開きになった口元がやけに艶めかしい。
緊急事態だというのに不謹慎ではあるが、何故か妙な色気と心のざわめきを感じていた。
それが俺と彼女の初めての出会いであり、付き合うキッカケ。
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