アナタニオボレル

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「ただいまー」 「おかえり。疲れたでしょ? お風呂沸かしてあるわよ」  仕事から疲れて帰宅すると、先に帰宅していた同棲中の彼女が出迎えてくれる。  黒のタイトスカートに白いシャツ。  インナーを着ていないため、下着が透けていた。 「恵理子。お前、その恰好で仕事に行っていたのか?」  俺の前だけなら問題ないが、他の男達の目があるところで、こんな悩殺的な姿はいただけない。  つい声を荒げると、困ったように眉を下げて、「こ、これにカーディガンを羽織って……」とこちらの様子を伺うように上目遣いをする。  カーディガンを羽織っていても、正面から見れば黒い下着がスケスケだ。  カッとなり、彼女の長い髪の毛を鷲掴みにしたまま物凄い勢いで廊下を進み浴室の扉を開ける。 「や、やぁっ! やめっ……」  今から何をされるのかを悟った恵理子は悲痛な声を出すが、容赦なく浴槽にはられた湯の中へと顔を浸ける。 「ガボボボボッ……」  突然のことで暴れる彼女は首を左右に振り、両手をバタつかせるが、あらかじめ空気を吸って準備していた訳でもなく、口から溢れだした酸素によって呼吸困難になり、うまく力が入らない。  吐き出された空気がゴボゴボと湯船にいくつもの泡を浮かべていく。  グイッと彼女の顏を水面から引き上げる。
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