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美月の姿がだんだんと遠くなる。
出国ゲートの奥に姿が消えると、浩二は小さく息をついた。
電光掲示板横の時計を見れば、19時を少し過ぎている。
浩二は踵を返して、広い通路を駅へと向かった。
辻から逃げるように歩き、目当ての店に辿り着いたのは数時間前。
美月の後ろで足の具合ばかり気にしていたから、見立てなんてする余裕は全くなかった。
美月はそれが不満そうだったけど、結局仕事でも着られるようなサマージャケットが気に入り、わりとすぐに決まった。
買い物が終わるとすぐに薬局で湿布を買った。
『こんな足の彼女を歩かせたらだめじゃない』
薬局のおばさんに言われた言葉を思い出し、かすかに苦笑する。
それはその通りだけど、美月は彼女じゃない。
浩二は駅の改札で立ち止まり、瑞希のことを思い浮かべた。
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