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「この世の中に完璧な人間なんていないんだよ。そんなこと言ってたら未世ちゃん一生結婚できないじゃん」
「しかし、未世様にはふさわしい方と人生を共にしていただきたいのです」
「ふさわしい方ねぇ…………ということは、俺が一番近いってことか」
「は?」
突拍子もない中田の意見に、葉山は意味がわからないといぶかしげな表情を浮かべる。
「だって、俺、忙しくて浪費する時間も遊ぶ時間もないし、収入面でも問題ないし」
「性格の不一致が一番の問題です。話し合う時間がないのもマイナスポイントです」
「お前さぁ…………そうか。そういうことか」
「は?そういうこととは、どういうことですか?」
「結局は、お前は自分みたいなやつ以外は認めないつもりなんだろ?」
「いえ、別に、私はそういうつもりでは…………」
「となると、思い切って旧式のお前を改造するか。最新の技術なら体の隅から隅まで人間と見間違うくらいにできるからな」
にやりと笑みを浮かべる中田に、葉山は冷ややかな視線を向ける。
「…………あなたのそういうところが問題だと言っているのです」
「なんでだよ。こっちは気を使ってやったっていうのに…………まぁ、今のは冗談として、とにかく、もう少しだけでいいから一緒にいてやれよ。未世ちゃんの幸せを願うなら、さ」
その時、研究室の扉が開いた。そこには未世の姿があって…………
彼女は、葉山の名前を呼びながら彼へ抱き着く。助かったというのに相変わらず泣きじゃくる彼女。優しく抱きとめた彼女の体は、あの別れの日よりも少し細くなっていて。
そんな彼女の姿に、葉山はもう少しだけ彼女のそばにいようと思った。
…………中田の言う通りにするのはしゃくだけれど。
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