忠誠と反逆のドールハウス

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「枕をなくしました」 「…………え?」  朝食をとっていた未世(みよ)は、執事である葉山(はやま)の突然の言葉に目をしばたたかせた。 「えっと…………ごめんなさい、意味がわからないのですが…………」 「そうですか。では説明いたします。枕とは、就寝時に頭をのせる寝具で…………」  いつもどおりの生真面目な顔で枕についての解説を始めた葉山に、未世はふるふると頭を横へふった。 「いえ、枕がなにかというのは私も知っています。そうではなくて、その枕をなくしたというのはどういうことかということが知りたいのです」 「どういうことかと言われましても、そのものずばり、枕をなくしたのです」 「…………枕なんて、普通なくすものですか?私は今まで一度もなくしたことがないのですが。葉山さんはそんなに寝相が悪いのですか?それとも、外に干していて強風で飛ばされたのですか?でも、昨日はそんなに強い風は吹いていないと思うのですが」  不思議そうに頭を傾げながら問いかける未世に、葉山はいつもどおり淡々と答える。 「私にもわからないのです。今朝、目を覚ましたらなくなっていまして」 「そうですか…………では、今日、一緒に買いにいきましょうか。ちょうど今日は日曜日で、私も仕事がお休みですので」  葉山と出かける用事ができ思わず嬉しそうに微笑んだ未世だったが、葉山は表情一つかえずに、まるでなんでもないことのように言った。 「それが、そう簡単には手に入らないのです」 「手に入らない?それは、オーダーメイドの枕なのですか?」 「いえ。私の枕は私の充電器を兼ねていまして。なにぶん、私も年代物のアンドロイドなので、付属品である充電器もそう簡単には手に入らないのです」 「え?」 「そして、残念なことに私のバッテリー残量は五時間をきっています。現在の時刻が午前八時十分ですので、本日のお昼過ぎには未世様とお別れしなければなりません」  突然突き付けられた事実に、未世は言葉を失った。
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