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「葉山さん!!」
倒れた葉山に未世は駆け寄る。
「申し訳ありません。まだ、あと二分あるはずなのですが、もう力が…………」
「誰か!お願い、誰か来て!!」
悲鳴に近い声で未世は叫ぶ。その声に、未世の命令で葉山の枕を探していたアンドロイド達がみな葉山の部屋へと駆け付けた。
「お嬢様、お呼びですか」
皆を代表してそう問うたのは、葉山と同じく執事アンドロイドの藤堂(とうどう)だった。
「藤堂さん…………葉山さんが…………葉山さんが…………」
倒れた葉山の体を支えながら、未世はぽろぽろと大粒の涙を流す。そんな未世に、藤堂は深々と頭を下げた。
「お嬢様、申し訳ありません。みなで懸命に探したのですが、どうしても葉山の枕を見つけることができませんでした」
もう、なすすべはない。ずっと、ずっと一緒だと思っていた葉山と、こんなに突然別れることになるなんて思いもしなかった。
「いや…………いやぁ…………お願いだから、いかないで…………」
葉山の手を握りしめ、未世は泣きじゃくる。
「もういいですから、私のためにそのように泣かないでください」
「なにか、まだなにか手段が…………そうだ。あのアンドロイド研究所へ行けば、他の充電方法があるかも」
「それはいけません。未世様、もうあの研究所へは行かないとお約束したはずです」
「でも、このままじゃ葉山さんが!」
「それに、私は旧式ですから、あの研究所へ行ったところで問題は解決しません。だから、いいですね。今後、なにがあってもあの研究所へは行ってはいけません。約束できますね?」
「…………はい」
「それと、未世様、申し訳ありませんが最後にお願いがありまして」
「お願い?」
「はい。私の後ろにある私のほうきをとっていただけないでしょうか?」
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