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「ッ!!」
喉の奥からうめき声が漏れる。
「な、なぜ…………」
驚愕と怒りが入り混じったような表情で、見下ろす。
しかし、悲鳴をあげたのも、驚愕したのも、未世ではなかった。それは、光線銃を手にした藤堂のほうで、彼の胸部は刃物で貫かれていた。
「…………貴様、あざむいたのか!」
「えぇ。けれど、まさかこうもあっさり騙されるとは思っていませんでしたが。優秀なアンドロイドが聞いて呆れます」
ゆっくりと上体を起こした葉山は、いつもの抑揚のない口調で言う。藤堂の体を貫く刃物の柄を握りしめたままで。
「よくできているでしょう。仕込み杖ならぬ仕込みほうきです。いつ仕掛けてくるかわからないからこちらも大変でしたよ」
「いつから気が付いていた!」
「先代のご存命中、そう、あなたがこのお屋敷に来た直後からです。同じアンドロイド同士、いやでもわかります。しかし、私のプログラミング上、疑惑だけでは処断することはできない。だから、そちらから仕掛けてくるのを待っていたのですが、いつまでたっても動かないので一か八かで隙を作らせてもらいました。まぁ、こんな単純な罠に引っかかる可能性は低いとは思ったのですが」
がくがくと震えだす藤堂の体。だがそれは、怒りのせいではなかった。
「中枢回路を破壊しました。あなたの構造ではもう指一本動かせないでしょう」
「くッ…………このままで…………このままで済むと思うなよ!!」
藤堂の咆哮が合図となり、 彼の後ろにひかえていた他のアンドロイド達が一斉に葉山へ襲いかかる。
「葉山さんッ!!」
「下がっていてください!」
葉山は藤堂の体から刀を引き抜くと、後ろに未世をかばいながらアンドロイド達にむけて刃をふるう。
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