忠誠と反逆のドールハウス

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 流れ出たオイルで黒く染まる床。狭い部屋をうめつくす、機能を停止したアンドロイド達。昨日まではまるで想像もできなかった凄惨な光景に、未世は両手で口を覆い、泣き叫びそうになるのを必死に堪えながら、震えていた。  葉山は倒れたアンドロイドから刀を引き抜くと、最後に残された三体のアンドロイドを見据える。オイルを全身に浴び、表情は恐ろしいほどに冷酷で。  三体のうちの一体が切りかかったのが合図だった。他の二体もそれに続く。葉山は迎え撃とうと一歩踏み込む。が、 「ッ!!」  床に広がったオイルに足がとられる。なんとか踏みとどまり、転倒だけは避けたが、三体はその一瞬を見逃さなかった。三本の刃が、葉山の体を貫く。 「ッ!!葉山さんッ!!」  甲高い未世の悲鳴。片膝をつく葉山。  未世は駆け寄ろうとしたが、葉山は左手を横へ伸ばし、未世を制する。  うつむいたままの葉山。がくがくと不安定に痙攣を始める体。 「中枢回路を破壊しました。終わりです」  一体のアンドロイドが淡々と告げる。  先ほどの藤堂と同じだ。中枢回路を破壊されてはもう動けない。 「いや…………いやぁ…………」  震えが止まらない葉山の体。ゆっくりと未世の方へ近づいてくるアンドロイド達。泣きじゃくる未世は逃げることさえできない。 「失礼します、未世様」  未世へとむけられるアンドロイドの刃。そして、 「ッ!!」  未世は驚き、目を見開く。目の前にいたはずのアンドロイドが倒れてゆく。その体には刀が突き刺さっていた。  刀の持ち主、葉山は、痙攣の止まらない身体で顔をあげると、にやりと笑った。 「旧式を…………なめんなよ!!」  葉山は床を蹴ると、刀を一閃させ、残り二体を一瞬で破壊する。  …………けれど、それが限界だった。
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