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で、こんなヤバいカードをうっかり高校に持ってきてしまい、それどころかその一枚をなくしてしまったのだ。この心境おわかりだろうか。
わたしは目を皿にして、視線を落としながら廊下を歩いた。首を左右に振り、必死でカードを探した。いったいどこにいった? まるで見当がつかない。
不幸中の幸いかどうか微妙なところだけど、昼休みで体の自由はきいた。なんとしても五時間目がはじまる前に見つけないと。はやる気持ちを抑えきれず、わたしの足は自然と速くなった。
手当たり次第に校舎や運動場を歩きまわること約二十分。首も痛くなってきたし、五時限目のチャイムが鳴りそうだし、あきらめて教室に戻ろうとした。
そこに、
「富士野」
と馴れ馴れしくわたしの名前を呼ぶ声がした。
「仁田くん?」
振り返らずとも、特徴的なバリトンボイスで気づけた。紛失したカードに写っている、仁田くんその人だ。
まさか本物に出会ってしまうとは……。なんだろう。すごくイヤな予感がする。
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