片恋カードが消える瞬間

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「どうしたの? なにか用?」  さりげなく足をとめ、振り向きざまに問う。 「ん。これ、昼休み前に落としただろ?」  眼前に差しだされたのは、一枚のカードだった。 ・名前:仁田隼人(にった はやと) ・属性:同級生 ・片恋度:ハートマーク×3(最大値10) ・好きなところ:心奪われるバリトンボイスでラヴソングを歌っている瞬間。ただし、基本は電波ソングや痛々しいアニソンばかり歌うオタク。滅多に歌わない。  記されているステータスも同じ。うん。間違いない。わたしオリジナルの仁田くんカード。つまり『片恋カード』だ。 「どど、ど、どこで拾ったのお? ってか。ってか、わたしのじゃないし」  動揺のあまり声が裏返り、舌がちゃんとまわらない。たぶん顔もおかしくなっている。表情筋が引きつっているのが、自分でもよくわかった。  一方、当の仁田くんは顔色一つ変えずに不気味なほど平然としている。 「いやいや。富士野のカバンから落ちるとこ見たし」  声も気味が悪いぐらい冷静だった。
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