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やきもち
交通事故で姉ちゃんが死んだ。
僅か二十歳の若さだった。
* * *
弟の目から見ても可愛くて、性格も頭も運動神経もよかった姉ちゃん。
二十歳で事故死なんていう幕切れは誰も想像してなくて、関わった人はむろん、こういう才色兼備の人がいた…なんて話を聞いた人までもが、姉ちゃんの死を悼んで泣いてくれた。
毎年毎年、命日には墓に献花やお供え物が並び、たくさんの人がお参りに来てくれた。それを見て俺も両親も、姉ちゃんが死んでしまったことと、
死んでなお、こんなにも誰からも愛されていることに泣いた。
…でも、もういいよな。
命日が訪れるたび、お寺さんにお願いしてお経を読み上げてもらう。でも、それを聞いているのは俺だけだ。
誰もいない法要。それが不満だというように、読経の間中、あちこちがガタガタ揺れるけれど、そんなことは気にしない。
一通りのやることを終えてお坊さんが帰って行く。それを待って、俺は仏壇の前に座り込んだ。
姉ちゃん、今年も姉ちゃんの法要は終わったよ。
もしかして不服だった? …だろうね。でも許してよ。
姉ちゃんが死んでからもう三十年以上の月日が過ぎた。
お寺さんでは、それでもまだ法要を行えるらしいけれど、正直、もう無理なんじゃないかな。
父さんも母さんもとっくにいない。姉ちゃんの葬式に参列してくれた人達も軒並みあの世に旅立った。
生前は、才色兼備で、誰からも好かれていたけれど、もうあれから何十年も経ったんだ。覚えている人なんてほとんどいないし、仏壇の写真程度じゃ、どんなに綺麗でも死んだ人間に人はちやほやしてくれないよ。
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