やきもち

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 実際、今日だって、法要に出席しているのは俺だけだ。一応、まだ存命の、生前の姉ちゃんを知る人に声はかけたけれど、もう誰も来てはくれなかった。  俺ももうだいぶガタがきてるから、多分来年はもう無理だ。だから姉ちゃん、法事は今年まででいいよな?  あと、そろそろ俺を許してくれないか?  もう三十年以上、俺は姉ちゃんのために祈ってる。  結婚もしてなければどこかに子供がいるとかもない。  父さんも母さんも亡くなって、親戚との縁もとうに薄れた。  今の俺は、もう天涯孤独といってもいい身の上だ。  こうやって、俺は一生を、姉ちゃんの冥福を祈るために捧げてきたよ。だからもういいだろ? 許してくれよ。  姉ちゃんは俺の憧れだった。だから、姉ちゃんがあの男と一緒にいて、凄く幸せそうに笑っているのが耐えられなかった。  子供の嫉妬だよ。ただそれだけ。姉ちゃんを誰にも盗られたくなくて…だからあの日、一方的にむくれる俺をなだめようとしてた姉ちゃんを、俺は邪険に突き飛ばしたんだ。  姉ちゃんが死んだのは事故だ。俺が悪かったのは認めるけど、あれはただの事故だったんだよ。  笑っていたくせに。  そう囁かれて顔を上げる。  反省なのか言い訳なのかも判らないこの考えを思い巡らせるたび、いつもこうして姉ちゃんの声がする。そのたびに俺は、まだ許されていないのだということを思い知る。  姉ちゃん。姉ちゃん…ごめんさない。  何十年も繰り返し続けてきた謝罪の言葉。  写真の中の微笑みは何も言ってくれないから、きっと俺は、死ぬまでこれを繰り返すのだろう。 やきもち…完
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