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そこには、「お父さん、ありがとう」とメッセージが書かれている。
僕は嬉しくて涙が溢れる。
警官が不思議そうに訊ねてくる。
「そんなに大事なものなのかね?」
僕は、こくりと頷いた。
「これは、上の娘が僕にくれた大事なものなんです。このカードで、はじめて僕をお父さんと呼んでくれたんです……。これがあれば、僕はいくらでも頑張れる……」
そこから、警官に僕には二人娘がいることを教えて、上の子はお嫁さんの連れ子だということまで話した。
警官たちは半ば呆れていたが、僕が礼を言って帰ろうとしたときに「頑張れよ、お父さん」と声をかけてくれた。
僕は交番を出て、もう一度そのカードを確認した。
「これだけは……、これだけは絶対なくさないから……」
そう呟いて僕は真夜中、家路についたのだった。
了
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