part1.クレゾールと林檎

15/16
1007人が本棚に入れています
本棚に追加
/321ページ
「うるさいなぁ。大の男がキスのひとつやふたつで騒がないでよ。隙だらけな君も悪いだろ」 悪びれもせず、まるで逆に迷惑を掛けられているかのような物言いでノアが肩を竦める。 「帰る!!」 言い返していたら手まで出そうだったので背を向けて部屋を飛び出した。 どすどすと早足で廊下を歩いていく。周りからの視線が痛かったが全部無視して病院を去る。 最悪だ。怪我人だと思って油断していた。 やたらとちょっかいをかけてくるとは思っていた。仕事で関わる人間に迫られるなんて迷惑でしかない。だから今まで必死に接触を避けてきた。 仕事で会った回数だってそんなに多くはない。 しかも会えば初対面から言い争いばかりだ。あいつはいちいち吹っ掛けてきて、俺の知っている限り、生まれ、育ち、性格、何から何まで合わないと思う。それなのに、どうして俺と関わりたがるのだろう。
/321ページ

最初のコメントを投稿しよう!