part2.ポマードと香辛料

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警部は机に肘を付き、指を組んだ。 「ノアが警官を雇い入れることはやめさせ、代わりに連続殺人の件で捜査に協力してもらうことにした。君には彼を警護しながら共に捜査をしてもらう」 思ってもいない事態に驚いたが、必死に動揺を押し隠す。 にやけたあの男の顔が浮かんで唇を噛んだ。こうなることはあの探偵にとって規定路線だったのかもしれない。 マクダウェル警部は捜査が行き詰まると決まってあいつに協力を要請している。 必要以上に恐怖を与えないよう情報規制を行ってきたが、殺人鬼のことはとっくに街中に知れ渡り、一向に犯人に辿り着けない警察への人々の不満は募っていた。組織としても、使えるものは使って一刻も早く事件を解決したいわけだ。 いっそ病院での事を警部に報告できたら楽なんだが、そういう気にもなれなかった。 あの男との仲を疑われるのも面倒だ。下手をすれば探偵ではなく俺が捜査を外される危険性まで孕む。
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