part2.ポマードと香辛料

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「フィリップはどうするんですか」 「彼にも君達のサポートとして捜査を続けてもらうよ。元々裏方仕事のほうが得意な男だからね、既に快諾してくれている」 フィリップは普段から俺と組むことの多い同僚の刑事だ。あわよくば探偵の警護役を押し付けたかったが、なんとなく予想していた通りの言葉が返ってくる。 初めて探偵に会ったとき、二人は友人同士だとフィリップから紹介された記憶がある。警部は俺たちの橋渡しさせることで捜査が円滑に進むと踏んだのだろう。 「ノアと組むのは初めてだな。真面目な君には少々扱いにくい性格だろうが、君たちなら成果を上げてくれると信じているよ」 結局探偵の警護をせずに済む理由は考え付かず、警部にこう言われては承諾するしかなかった。気乗りはしないが、仕事なので放り出すわけにもいかない。 「分かりました。今すぐノアの元へ向かったほうが良いでしょうか?」 「いや、あと数日で彼は退院する。病院の警備はしっかりしているから、共に捜査するのも退院後でいい」 「はい。ではフィリップと話をしてきます」 「ああ、よろしく頼む……それから、」 話が終わったかと扉に一歩向かった脚を止めた。マクダウェル警部の鋭い視線がどこかに思いを馳せるように泳ぐ。 「ノアのことをしっかり護ってやってくれ。彼は少し、危ういところがあるから」 警護を兼ねているのだから、当然俺はあいつを護らなけばならない。なぜ警部がそんなことを言うのか分からなかったが、頷いて一声掛けてからデスクへ戻った。
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