part2.ポマードと香辛料

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俺が暴行されたあの日、フィリップは殺人鬼の過去の行動から次に死体が発見される場所はイーストエンド近隣ではないかと言い当てた。 もちろんそれを聞いた時、俺もフィリップもそうなると確信があったわけではない。しかし、もしかしたらという思いでその夜ひとり向かったところに、殺人鬼は本当に現れた。 自分がそんなことを言わなければ。自分が一緒に行っていれば。俺が命の危機に遭うことはなかったと、フィリップはそう思っているらしい。 全く馬鹿げている。あれは俺の勝手な行動が招いた結果で、こいつに責任なんか無い。それよりも犯人の行動を予測できたことを誇るべきだ。 見舞いにも何度も訪ねてきて、毎度謝罪されるのでそう言い返し続けているのだが、フィリップの気は収まらないようだった。この男も基本的に人が良すぎる。 「そんなことより捜査だ。あんたも聞いているだろう、あの探偵のこと」 いい加減うるさくも感じていたので、強引に話を変えた。本題は同じだったようで、フィリップも思い出したような反応をする。 「実際、どうなんだ。あいつ」 「どうって?」 「使えるのか? 俺は仕事で直接関わったことがないから、よく知らないんだよ」 「そりゃ使えない外部の人間なんてわざわざ雇わないだろ」
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