part2.ポマードと香辛料

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もっともな回答だが、それにしてもマクダウェル警部の探偵への入れ込みようは不自然に感じる。仕事上付き合いがあるだけの男をあんなふうに心配するだろうか。 嫌な考えが頭を過って、フィリップの耳に近付いて周りに聞こえないように小声で尋ねた。 「なあ、マクダウェル警部と探偵は何か、その、関係があったりするんだろうか?」 曖昧な言い方だったがフィリップは意図に気付き、大口を開けて笑い飛ばした。 「ノアとマクダウェル警部が? そりゃないぜ! 警部は超が付く愛妻家だし、何より見た目は熊みたいだろ。二人が並んだらまさに美女と野獣……ぶはっ」 申し訳程度に声は抑えているが、自分の言ったことでさらにツボに入ったらしくブルブル震えながら笑い続けている。 俺だってマクダウェル警部が愛妻家なのは知っている。男相手に浮気をするなんて考えたくもない。 だがノアのほうは、フィリップの言う通りあの鼻につく性格に反して顔は整っている。たいして仕事をしていそうもないのに上等な仕立ての服ばかり着ていて、警部相手でなくとも金持ちオヤジのパトロンがいると言われれば納得してしまう。
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