part2.ポマードと香辛料

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フィリップの笑いがいつまでも収まらないので、「いい加減にしろ」とモコモコの頭を叩く。 「まあ……警部はともかく、ノアはそういう噂がないわけじゃないけどな。なんてったってあいつのファンは男女共に多い」 「ファン?」 「あの容姿だし、仕事はしっかり熟すから。下心があるかはそれぞれだろうけど、うちの課にも憧れているやつは結構いるよ」 「うちの職場には男しかいないはずだが」 「もちろん外へ出ればご婦人にも人気だとも」 俺は呆れて鼻を鳴らした。 「アホくさ。あんな面倒な男の何がいいんだ」 「とにかく、本人からのご指名だろう? きっとウィルの仕事ぶりを評価したんだろうな」 「だから一緒に仕事したことないって」 「んん? そうか、じゃあ人となりを気に入ったとか?」 「ただ自分に靡かない人間が物珍しくて警護に選んだんだろ。俺はちっとも嬉しくないから、そんなにあいつと組みたいやつらがいるなら代わってほしい」 同僚は苦々しい笑顔を浮かべた。フィリップからすれば友人を悪く言われて気分を害したかとも思ったが、そういうわけでもなさそうだ。この男も友人なのであいつの自由すぎる性格を知っているためだろう。 「毛嫌いしてやるなよ。問題児で突拍子も無いことをしたりするけどさ、そう悪い奴じゃない」 肩を竦め、しっかりと橋渡し役を演じようとする同僚へ噛みしめるようなささやかな微笑を返す。 「フィリップ。あんたには世話になっているから感謝してるし、結構あんたのことを信頼してるけど」 「へえ。そりゃ初耳」 「これに関してはちっとも信用してない」
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