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香水がふわりと馨って脳髄に侵食していく。
自分で買い与えておきながら、元から周りを魅了してやまない男に、大変なものを持たせてしまったと思う。
この"匂い"はある種凶器だ。
誘われたらもう抗えない。どこまでも溺れて沈んでいくしかない。
もし誰の目にも触れさせたくないって言ったら、おまえはどうするんだろう。
さっきみたいに笑うのか。
「ねえ、抱きしめるだけじゃないよね……?」
柔らかい髪が頬を撫でる。
見つめてくる眼の瞳孔が拡がり、空気が色を帯びる。
熱く口付けて、思考が甘くとろけていく。
このラストノートにどうしようもなく惑わされる。
どんなに考えたところで俺はこの奔放な男を縛ることができない。
だからこそ、この"香り"を与えるのはいつも俺でありたい。
End
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