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探偵は一度目を丸くした後、「そんな少女みたいな反応をしなくても、取って喰ったりしないよ」と今度は手前のパーソナルソファに腰掛けた。
「おい、最初に忠告しておくが、おまえの周りの……男だか女だか知らないが、そいつらは喜ぶのかもしれないが、俺は違うからな! 二度とあんなことするな!」
「そいつらとか、あんなこととか、いったい何の話をしているのか分からないけど」
入院時伸びきっていた黒髪は切られ、細身のトラッドスーツに身を包んでいる。事件前と変わらない見た目になっていた男は、フッと笑みを溢した。
「今日は真面目なお仕事のために集まったっていうのに、何を考えているんだろうね」
「何が真面目なお仕事だ。おまえこそ、私情のために俺を指名なんかしたんだろうが」
「私情なんか関係ないよ。僕はこう見えて人見知りだし、適材適所でしょ。"元要人警護課"のウィリアム刑事」
こいつの口から出た予想外の言葉に、へらへら笑う天然パーマが思い浮かぶ。おそらくはフィリップから漏れた情報だろう。
「余計なことを……とにかく、今後またあんなことをしたら容赦なく殴るからな!」
「はは。刑事さんがそんなこと言っていいのかなぁ」
激しく威嚇したところで、男は気にするそぶりも見せない。
警戒を解かず、奥の扉に視線をやる。この部屋に入ってきたときから、その向こうに人の気配を感じていた。
「他に誰かいるのか」
「え? ああ……」
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