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ちょうどその扉が開いて、十代後半くらいの少年が現れる。赤茶けた髪に丸っこいレンズの眼鏡を掛けた少年は、俺に気付いて挨拶をしてきた。
「いらっしゃいませ」
フレーム越しにじっくりと全身を観察される。俺はその視線に違和感を覚えた。何かおかしな格好をしていただろうかと考えたが、どうやらそうではない。
「あっ、あの、お邪魔しました! カーネイルさん、僕もう失礼しますね」
「待て」
早足で横を通りすぎようとした少年の襟を後ろから子猫の首根っこを掴み上げる時のように引き止める。少年の様子はまるで若いカップル相手に気を使うような言い方だった。俺の思い過ごしでなければ、ひどい勘違いなので訂正しておく必要がある。
「君はいったい俺をどんな客人だと思っている?」
「……ええと、探偵業の依頼人には、見えませんでした。あとここにいらっしゃるのは、警察関係の方でないのならカーネイルさんと親しくされている方かと思いますので、そういったお知り合いかと……」
「……何故その二択で後者を選んだ」
俺は腹の底から重たいため息を吐き出した。
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